孫娘である私の思い付きから始まった「THEマンション計画」であったが、まだまだ道のりは遠い。
なんとか相談に乗ってくれるハウスメーカーを見つけ、早速本社訪問。営業担当のBさんは、丁寧で親切な人だった。さすがは大手メーカー。初めての相談にして、帰りは紙袋いっぱいの資料の山。アパート経営基礎知識、過去の物件紹介、あなたの土地カンタン診断などなど。その上一週間後には、私たちの土地に合った提案プランと収支試算などの載った経営計画書なるものが出来上がるそうだ。これらすべてが無料。タダほど高いものはないと言うが、タダはやっぱり嬉しい。
一週間後、できあがったマンションプランを見た第一印象は「やっぱり.....」の一言。うちの土地は間口の狭い長方形。プランが限られるのは仕方がない。それにしても危惧していたとおりのワンルームマンションであった。 エレベーターを挟んで並ぶ部屋。入るとすぐの台所。申し訳程度のベランダ。そこに寝に帰るだけの住人の生活が目に浮かぶようだ。その日は早々に退散して、考え込んだ。担当者Bさんによると、立地としては便利な場所なので単身者用のマンションだと有望、ということだった。しかし、しかし。やはり気乗りがしない。私が住みたいと思えるマンションにしたい。でも狭く細長い土地ではあのプランが精一杯なのか。その上、父母も多額の借金を抱えることへの不安からあまり積極的ではない様子。「THE賃貸マンション計画」は一転、スローダウンしていった。
進展のないまま何日か過ぎたある日、書店の住宅雑誌コーナーで一冊の本に出会った。カーサウエスト創刊号。建築家の住宅ばかりを載せた雑誌でそれも関西発。すぐレジに向かう。その中にひとつの集合住宅が紹介されていた。雰囲気のあるエントランス、中庭、大きなガラス窓。素敵だった。気になる土地面積も同じくらいだ。狭い土地でも個性的なマンションが建つことを知った。
「これやん」。すぐにそのマンションを設計した建築家の事務所にファックスを送る。自己資金があまり無いことも正直に伝えた。断られるかもしれない。でもやっと見つけた一筋の光明。ダメでもともとだ。当たって砕けろ。
不安もつかの間、すぐに「大丈夫ですよ。一度お会いしましょう」との返事。私の頭の中でエンジン全開の音がした。「THEマンション計画」復活である。
written by 桑平真由子