CwOnline読者レポートわたしのマンション建設記-第3章

カーサウエスト読者レポートわたしのマンション建設記
第3章 「THEマンション計画」の最大の危機!

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 カーサウエスト創刊号が縁で会うことになった石橋清志氏の建築事務所は堺筋本町近くのレトロなビルにあった。関西弁がやさしい気さくなその人は、「資金なし、コネなし、ド素人」であるわたしの話に真剣に聞き入り、とにかく一度簡単な設計案を出してみましょう、と言ってくれた。相性はマル。お見合いは成功のようだ。
 数日後父母など家族総出で、石橋氏がこれまでに設計したマンションを見せてもらう。鉄製門扉、荒削りの壁、エントランスの落葉樹。それらすべてが、私たちへの答えだった。その帰り道、全員一致で石橋氏に依頼することを決めた。
 後日待望のラフスケッチが上がってきた。中庭を挟んで南北二棟からなるその案は、とてもあの狭い土地に建つとは思えないほどのボリューム感がある。石橋氏との出合いに感謝。この案でGOだ。ほんの数カ月前までは影も形も無かった私たちのマンションが具体的な形となって見え出し、ついついもう出来上がったかのように楽観的になっていた毎日だったがTHEマンション計画最大の難関はこれからだった。
 資金調達。どれだけ素敵な計画も、お金を貸してくれるところがない限り実現しないのである。これが想像していたより大変だった。最初に話を持ち込んだA銀行は支店レベルではOKが出たが、本店決済でアウトとなった。やはり自己資金ゼロは無理なのか。つぎはツテをたどってある地銀に申し込んだが、こちらは即、断られた。そして三行目。ここは大手デベロッパーと抱合せで紹介された都銀のB銀行。家族全員で面接にもでかけた。相続でもめることもあるので、全員の意志を確認する為だ。ほぼここで決まりそうだった。
 支店はもちろん本店決済でもOKが出た。融資申し込み書類を揃えるようにとの連絡がある。この書類を出すということはもう「融資決定確実」ということらしい。支店融資担当者もこれでOKだと言うので、急いで書類を手配する。土地の登記簿謄本、全員の戸籍謄本、住民票、印鑑証明、所得証明、納税証明などなど。申込み本人はもとより、連帯保証人となる父母や叔父の分を含めると、その数は数十枚にも及ぶ。役所も一ケ所ではすまない。市役所、区役所、法務局。一番ヒマな私が大阪中走り回って揃え、やっと提出を終える。あとは通知を待つばかり。私たちも石橋氏も何の不安もなかった。銀行の融資担当者がもう大丈夫と太鼓判を押しているのだ。
 しかし世の中そんなに甘くなかった。突然銀行から「融資できない」との連絡。担当者も平謝りだ。謝ってもらっても仕方がない。「大丈夫だと言ったじゃないか。あの分厚い書類はどうなるんだ。交通費を返せ、発行手数料を返せ、私の時間を返せ」。むなしい恨みの言葉が頭をめぐる。

 「THEマンション計画」を最大の危機が襲っていた。
written by 桑平真由子

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