狭小敷地の特集も5回目を迎えました。編集部に届く資料を見ていますと、アイデアや工夫次第でどんなに狭い敷地でも快適に暮らせる住宅が建てられるのだと感心してしまいます。今回は約9坪から約18坪の敷地に建てられた8邸をご紹介します。きわめつけは、30.46m2(約9坪)の敷地に建てられた店舗併用のワンルームマンションです。これは狭いうえにしかも二等辺三角形という変形敷地、専用住宅ではありませんが、ここに建てられるならば、たいていの敷地は何とかなるような気がします。そして、クルマ4台分の駐車場、59.50m2(約18坪)という今回の最大の敷地に建てられた、延べ面積約9坪の住宅は、建築家が最低どれだけのスペースがあれば暮らせるかと実験的に建てたミニマムハウスです。実際は、事務所として使われていますが、夫婦と子供1人の家族が想定されており、銭湯へ行くのであれば十分暮らせそうです。
8邸を見ていきますと、狭い敷地で快適に建てるための考え方というのが見えてきます。基本的にワンフロアワンルームで、パブリックゾーンとプライベートゾーンを重ね合わせるという構成です。空間はできるだけ仕切らず、間仕切りも建具や家具にすることにより、視覚的広さを確保することや家族の変化に対応することができます。階段は空間占拠率を考えればらせん階段が一番のようです。3階建が可能な敷地なら、比較的余裕ができ併用住宅にしたり駐車場を設けることも可能です。ただ、階層を重ねるとなると、狭くてもエレベーターを付けておくことも一つの選択です。大きなモノを移動したり、高齢化したときのことを考えると、狭いからこそ必要なのです。
広くて大きな家に比べ、狭くて小さな家は、掃除の手間や光熱費という面で有利です。現在のように仕事を持つ主婦が多くなると家事に時間や手間のかからない家はありがたいものです。そして、子供たちが独立してしまうと、大きな家のごく一部で老夫婦が生活をしているというケースもよく見られます。狭いと収納が少なくなるといえますが、広ければ広いなりにいつかはモノが溢れてきます。狭い敷地を有効に活用するには、私たちの暮らしに本当に必要なスペース、必要なモノについて考えてみることが大切なのかも知れません。
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御領の家
かつての水郷地帯の面影を残して建て替えられた築120年の農家
設計/大西憲司大和郡山の家
築70年を越える町屋を高齢者が快適に暮らせる空間に改修
設計/片岡範文