だいたいの間取りが決まりました。入れ物が決まったわけです。さて、その仕上げをどうするかが次の課題です。最初の頃の打ち合わせでも、話は出ます。ですから、その時にデティールの話までしておくとこの段階はすんなり決まってきます。とはいえ、わからないこともたくさんあります。ここで全く建築家に任せてもいいのでしょうけど(もちろん基本的な部分はお任せします)、自分たちが住むのだからという強い思いがあるので、この頃から、自分なりの、住宅についての勉強が始まります。
まず、住宅についての捉え方が気になります。住宅というより、「棲む」ということは何か、といった若干哲学的または文化人類学的な命題が生じます。でも、深く掘り下げると逆にどこに住んでも、自分さえ変わらなければそれでいい。といったある種達観した境地になり、かえって危うくもなります。(笑)
もう少し楽しく考えましょう。突き詰めた生活はしたくないですからね。そこで参考にしたものは住宅設計の第一人者といわれる宮脇 檀さんの著作です。住宅に必要な細かな心配りが分かるようになります。ここに「宮脇 檀の住宅設計テキスト(丸善株式会社発行)」という本がありますが、その中の章の大見出しをいくつか引用します。「プランニングは生活の鏡、生活の母胎」「開口部は人間と自然の意識的な接点」「家具は住居と人間の両方に属する」などです。だいたいの感じは分かっていただけたでしょうか。雑誌関係ではこのカーサウエストや新建築の住宅特集(jt)などを参考にします。
そして、「あーなるほど」を胸に実際の広さをなどを体感するために、メジャーを持って住宅公園などのハウスメーカーのモデルハウスに行きます。営業の人には適当に返事をしながら、廊下の幅や階段、キッチンなどを測ったり、仕上げを観察します。同様にキッチン、バス、トイレ関係のショールームにも伺います。加えて家具関係のショップも観察します。ますます、イメージが膨らんできます。家具関係は好みにもよるのでしょうが、ごちゃごちゃと家具をおいてあるショップじゃなく、ある程度使い方を想定している所に行きます。私のよく行ったショップはカッシーナインターデコール、アクタス空港店、エクリュ、モーリーショップなどです。又、照明器具についても考えます。(せっかく建てるのですから、電気屋で買ってきて付けるというのは寂しい、賃貸生活が長いとついそうなります)今は便利なものでCD-ROMカタログなるものがあり、インターネットを通じて手に入れることができます。私は遠藤照明、マックスレイのそれを手に入れました。また、ヤマギワのようにサイトカタログが充実しているページも参考になります。(その他にもネットでいろいろ探しまわりました、玄関ドア、鍵、ドアノブ、タイル、ガラスブロック、塗料etc)
いろいろ材料はそろいました。以上をまた図面に落とし込んで打ち合わせに臨みます。キッチンが決まり、壁が決まり床が決まってきます。多分、一番楽しい時期です。でも、現実的な問題とぶつかるのはこの頃です。それは予算です。天井、壁、床などは面積が広い分、どのような仕様にするかで大きく金額が変わってきます。私の場合、元々シンプルなのが好きだったので、出来るだけ壁、天井は何もせずコンクリートのままを選択、その代わりどうしても壁や天井の始末が必要な所には珪藻土を選択しました。床も無垢材が気になりましたが安価な節のあるもの(私はどうも視線が落ち着かない)はイヤで、また、吹き抜けを設けたために床暖房のできるものということで合板フローリングを選択しましたが、ランクは落ちてしまいました。そのことは少し気にしています。とはいえ、これで、家らしくなってきて基本設計はほぼ終了します。
次は実際に見積もりを出せるようにしなくてはなりません。内装材の選択、キッチン等水回りの設備、照明器具の決定、コンセント、スイッチの位置などの実施設計に入ります。だんだんと選択肢が増えてきます。迷いが出てくるのはこの頃です。小さな迷いが不安に変わり、間取りも少し変えようかといった建築家泣かせの考えも浮かんだりして......。(辛抱強く聞いてくれますが)
written by 西田