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　大阪府堺市土師町にある西友建設株式会社は、住宅建築を専業に5年前に設立された企業である。大阪府立大学の西側にある同社を訪ね代表取締役の西田幸彦氏から設立の経緯、業務の特色、今後の展開、そして建築家の住宅を手がける思い等をうかがってみた。

▼住宅の仕事に意義や面白さを感じて独立

　西田氏は、祖父が創業し、父の経営する西田建設株式会社（本社大阪府堺市土師町）に20年近く勤め、専務取締役として設計と現場監理を担当してこられた。同社は、公共建築、マンションから住宅まで幅広く手がけているが、在職中に建築家の設計した住宅を手がけたことがきかっけとなり、5年前の1996年（平成8年）に住宅を専門に手がけていこうと西友建設株式会社を設立して独立を果たされたのである。西友建設の名は、父である西田友造氏の名前にちなんだものだそうで、設立にあたっては同じエリアでの営業を避け、兵庫県西宮市に拠点を置くつもりで事務所を建設したという。ところがお子さんが事故で長期間入院するという事態が起こり、経理面を奥さんが担当されていたこともあり、自宅の隣に事務所を新たに建設されたのである。こうして堺市の支店を拠点に活動を始められたわけであるが、現在も西宮市の事務所が登記上の本店となっている。

▼建築家のプランを施工面で工夫しながら具体化する楽しみ

　西田氏が住宅建築を専門に独立しようと決断された背景には、西田氏自身が住宅の仕事が好きだったことが第一に挙げられるだろう。以前から公共建築などと違い、いろいろな工夫が要求される住宅の仕事に意義や面白みを感じていたのだという。建築家の住宅を初めて手がけたのは、15、6年前、西田建設時代のことであるが、建築家の図面を見て、いかにコーディネートするか、施工サイドとしてより良いものにするための方法論をいろいろ工夫するところにつくる楽しみ、喜びを感じたそうである。売上高や利益率のことを考えれば、マンション等の大規模な仕事の方が経営的にも有利なわけであるが、それ以上に西田氏にとっては住宅の仕事が魅力的だったといえるだろう。もちろん、指名のこともあるが、数社の合い見積りといった厳しいケースも多く、経理を担当する奥さんには苦労のかけっぱなしだという。事実、西田氏が住宅の仕事に専念できるのは奥様の強力なサポートあってのことだろう。

▼建築した住宅そのものが最大の営業ツール

　建築家の仕事は、一人ずつ内容が異なるだけでなく、同じ建築家の仕事でも毎回新しい発想に出会うことができる。施工サイドの創意工夫や手のかけ方で、プラン以上のものをつくりあげることができる。建築家の仕事をやる最大の醍醐味は、自分の想像を超える空間ができることであるという。しかも建築主の喜ぶ笑顔に出会えるわけで、この仕事をしていて本当に良かったと思うそうである。
　常雇いの職人は大工が4人と土工が2人であるが、技術的には建築家のどんな要望もこなしていける自信がある。実際、これまでには楕円の平面を持つ木造住宅を建築したこともあるという。営業力がない同社にとっては、建築した住宅そのものが最大の営業ツールである。職人には小さなディテールが集まってひとつの建物になることを常に説明しているという。やはり、大きな観点から物事を見つめることが勘所である、意味を分かってやるのと分からずにやるのでは全く異なる結果になるそうである。

▼建築主と建築家の板挟みで苦労することも多い

　もちろん、いいことばかりではなく、難しいことや気苦労も多いという。一番悩むのは、ある程度工事が進んだ段階で建築主から思っていたものと違うといわれることである。いくら建築家が図面や模型を使って説明しても、一般の建築主が頭の中で想像して100％理解できていることはありえない。同じ説明を聞いてもご主人と奥さんでは理解の仕方も認識も大きなズレがある。そういう場合は、建築家に言いづらいのか、施工会社に話の鉾先が向けられる。しかもそれが建築家のこだわった部分であったりするケースも多く、双方の板挟みとなり、調整に一苦労するという。こんなときは出来るだけデザインを壊さないようにしながら、建築主にも納得していただける解決策を見つけるようにしているそうである。好きだから苦労をいとわないともいえるが、変更があるのは当たり前という姿勢がなければなかなか対応出来ないことである。入居後、建築主が喜んで住まわれているのを見ると、苦労が報いられた思いだという。

▼楽しみながら新しい経験に挑戦していきたい

　同社の仕事振りを気に入った建築家から何度も声をかけてもらうことも多いが、そうなると現場が遠くても断ることはない。おかげで兵庫県から和歌山県まで関西一円ならどこにでも出かけることになるという。
　独立後、これまでに建てられた住宅は38棟におよぶ。建築家の仕事以外の住宅は西田氏が自ら設計を担当されており、こちらは地元を中心に展開されている。構造的には在来木造と鉄筋コンクリート造が多いという。
　これからも、より多くの建築家の住宅を手がけ、楽しみながら、自分も職人も新しい経験に挑戦していきたいという。◆