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建築家の仕事をする関西の優良施工会社
木材店の強みを生かして他社と差別化を図る

株式会社伊藤嘉材木店大阪市住吉区

株式会社伊藤嘉材木店
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<< 桁柱に使う丸太の加工も可能な同社の加工場
 大阪市住吉区長峡町にある株式会社伊藤嘉材木店は、その名の通り大正年間からこの地で営業を続けてきた木材店である。住吉大社のすぐ近くにある同社を訪ね、代表取締役の伊藤正雄氏から建築を始めようと思ったきっかけ、業務の特色、今後の方向性などについて伺った。

木材店が始めた住宅建築
 同社の創業は古く、大正時代にさかのぼる。現在の代表取締役である伊藤正雄氏の祖父、伊藤嘉四郎氏が個人商店として木材店を創業されたのが始まりである。その後、1956年(昭和31年)に伊藤氏の父の時代に株式会社伊藤嘉材木店として法人化されている。木材店として長い歴史を誇る同社が建築業を始めることにしたのは伊藤氏で9年前の1991年(平成3年)のことである。某ハウスメーカーで6年余り営業企画を経験した伊藤氏にすれば、以前から納材のため現場で工務店の仕事振りを見るにつけ、部材としての木材を販売するだけで終わるのではなく、住宅一棟を手がけたいという熱い思いを抱いていたのである。
 それまでは、逆にお客様からの要望があれば、工務店を紹介することもあったという。うまくいけばよし、うまくいかなければ、間に入ってかえって気苦労させられることも多かったという。
従兄からの依頼をきっかけとして
 そんな頃、たまたま従兄から家を建てて欲しい、それも伊藤氏自らにやって欲しいと請われたのである。伊藤氏にとっては長年の思いを実現する願ってもないチャンスであった。そしてこれが同社が建築業を始める直接的なきっかけにもなった。
 当初はリフォームを主体に展開していたというが、いつの間にかリフォームの延長から新築へと発展していくことになったのである。
 スタートしたのが丁度バブルの直後であり、既存の得意先が倒産したり、廃業したりと苦しいことも重なったが、ものをつくるのが好きだった伊藤氏にすれば、それ以上に面白かったそうである。

自然素材への関心の高まりが追風に
 数年前からのシックハウス問題に端を発した自然素材への関心の高まりは、木材店との兼業でやっている同社にとってはうれしい追風ともいえる。何しろ木材店であるから木材なら目の前に何でもある、必要であればすぐにも揃えられる。言葉だけでなく実際の木材を見較べてもらえるという強みは、競合他社には真似のできない、木材店ならではの強みである。建築主に納得してもらいやすいことも大きなポイントだといえる。もちろん、木材に関する豊富な知識も売り物の一つで建築家からの問い合わせも多い。本誌掲載の住宅を見て、見積り依頼もあったという。
 最近は古材や民家にも人気が集まっているが、目下ある建築家から1774年(安永3年)に建てられた柏原市の民家を建替えるべく解体した古材を預かっているそうだ。1774年といえば226年前の建物というわけであるが、さすがに太い梁や柱などの木材はまだまだ使える状態であり、設計のでき上がるのが楽しみだそうだ。
 
丸太加工も自社で可能
 木造住宅もプレカットが主流となり、もはや刻みのできる職人も減ってしまった。同社でもプレカットを取り扱うが、木材店の広い敷地を生かして、桁柱などに用いられる丸太の加工も行っている。大阪市内では丸太の加工ができる木材店はほとんど無くなってしまったという。同社は現在も丸太の加工も行っており、長尺のトレーラーが交通量の少ない深夜に丸太を運び込み、早朝に加工場に降ろすのだという。

木材店ならではの特長を生かして
 現在の同社の主要な業務は、リフォームと設計事務所からの仕事、そして元請けの仕事、マンションの営繕というのが主要なところである。構造的には、当然のことでもあるが、在来木造が中心である。とはいっても鉄骨造も鉄筋コンクリート造も手がけているが、内装にふんだんに木材を使うなど木材の使い方が他社とは大きく異なるところである。
 まだ施工は請負ったことはないが、木材の納材では以前からおつき合いのある設計事務所もかなりの数にのぼるという。自社で請負った物件の場合、木材のコストが気になるところだが、適正利潤はきちんといただくことにしているという。
 これからも建築家の住宅は、年間5〜10棟程度を受注し、1棟ずつ確実に仕上げていきたいという。伊藤氏に言わせると現在以上の規模にする気は全くなく、同社では仕事は口コミで増えてきており、今後もこれまでの信用を大切にしながら、口コミの話題になるようないい実績を残していきたいそうである。

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