CwOnlineカーサウエストとはバックナンバーNo12>優良工務店リスト012_01

建築家の仕事をする関西の優良施工会社
自然材と加工精度へのこだわりで質のいい住宅づくりを目指す

株式会社朝陽工務店大阪府堺市

株式会社朝日工務店
No12へ戻る
<前の住宅ファイル 次の住宅ファイル>

<<ずらりと積み上げられ社内の資材置き場でさらに乾燥される桧の柱
 大阪府堺市にある株式会社朝陽工務店は、材木の購入から加工、保管までをすべて自社で行うという徹底した木材へのこだわりが特色である。JR阪和線の鳳駅から車で東へ5分余りのところにある同社に代表取締役の朝陽高吉氏を訪ね、設立の経緯、業務の特色、今後の展開、そして建築家の住宅を手がける思い等をうかがってみた。

質のいい住宅づくりを目指して創業
 朝陽氏が施工会社を始めようと思い立った背景には、かつて勤めていた分譲住宅会社の手抜き工事と材料の品質の悪さがある。再三にわたり改善を提案したが聞き入れられず、もう少しましな住宅をつくろうと自ら会社を設立されたのが1970年(昭和45年)の12月21日、28歳の時であった。
 こうして朝陽氏の品質のいい住宅づくりへの挑戦が始まったわけである。分譲会社では営業を担当されており、施工経験はなかったというから、資金面、技術面、経営面でもかなり苦労をされたことだろう。以来30年、今も「金もうけは二の次、いい住宅を建てることが先決」という創業時の思いはまったく変っていない。こうした朝陽氏の熱い思いとそれを支えてきた社員の努力の結果、年間受注数も安定し、小舞土壁塗りの本格和風住宅を中心に業績を伸ばしてきた。

社員教育の質の高さに品質へのこだわりを見る
 質の高い住宅をつくるには加工精度ときちっとした材料管理が必要とモルダー等の機械を導入して加工場を設けたのは、設立4年目の1974年(昭和49年)のこと。いかに先見の明があったかということである。機械でできる作業は機械の精度とスピードに委せることで大工の匠の技が十分に発揮される。同時に良質な天然材の豊富な在庫と機械の加工力はコストダウンにもつながる。操業後の工場を見せていただいて驚いたのは、床に木くず一つ落ちていないどころかモルダー等の機械類がぴかぴかに磨き上げられていたことである。毎日終業時にはこの状態まで掃除するという。社長の思いが社員の一人ひとりにまで伝わり、同社の品質へのこだわりのすごさを垣間見た気がした。また、住みながらのリフォームの場合など、建築主が外出する時は貴重品を同社の職人さんに預けていくという。当然のことかも知れないが、社員教育の質の高さを物語る話である。
 
安心して天然材を使用するため芯まで計測できる含水計を導入
 朝陽氏の乾燥材へのこだわりは徹底しており、山から直接仕入れた乾燥材はさらに適材になるまで資材置き場で乾燥させるという。実際、資材置き場には木材店と見まがうばかりの量の木材が積み上げられている。さらに、最近開発された木材の芯部分の含水率まで計測できる含水計の第1号機が導入された。従来は木の表面と芯部分の乾燥度の違いで予測できない木材の変形、変質があったが、芯までの含水率が確認できるようになり安心して天然材を使えるようになったのである。
 
山を守るには建築主のこだわりも大切
 欧米と同様、日本の山も乾燥窯を導入して含水率をコントロールしながら人工乾燥させた乾燥材を出荷することが必要。国の助成により、乾燥窯を導入させるといった抜本的な対策でもない限り、日本の山の再生はもはや不可能だという。
 戦後、建築用材に適すると思われた針葉樹が植林されたまま適材期に伐採もできず、古来の山の緑の姿が忘れられようとしている。山の緑は杉や桧だけではなく、数えきれない種類の木とその下草、草花、蔓が繁る。土に生息する無数のバクテリア菌、さらにその土地の気候に合った動植物や菌にまで様々な狂いが多発している。山が荒れれば、河も海も荒れる。アトピーや花粉症だけではない。環境を取り戻し、共生と感謝のために今一度、一から始めよう。全国約60万社の工務店が1本ずつ柱を余計に使えば、60万本の柱の需要が増えるというのも朝陽氏の山への思いである。

建築家の新しい考えに刺激される
 壁内結露が解決されない限り、いくら自然素材を使い、高気密高断熱にしても、シックハウス症候群の原因である雑菌の繁殖は避けられない。耐震性能を高めるホールダウン金物にしても、内部と外部の温度差により結露が発生する。結露が発生した場所は雑菌がすぐに繁殖し、腐りが始まる。これではいざという時に金物本来の性能を発揮することはできない。同社では金物が結露しないよう発泡ウレタンフォームで巻いているが、根本的な解決策ではないと、いろいろな実験や研究を重ねている。
 社内に設計部門をかかえ、現代数寄屋風の住宅をはじめ本格和風建築を得意とされてきたが、社外の新しい考えに接することは刺激になっていいと10数年前から建築家の仕事も手がけている。新しいデザインや材料の新しい使い方には参考になることも多く、職人の技術を磨いたり、維持させるのにも有効である。
 これからの安全で健康な住まいづくりをより確実にするため、構造設計士の立石氏を役員に迎え、新工法や技術開発にも意欲的に取り組んでいる。床下通気を大幅に改善するコンクリート基礎の施工法を開発、同社第1号の特許も申請した。また、構造材や化粧材にムクの天然素材を多量に使い、癒される室内空間の研究、施工も行っている。

top