2月17日の日曜日は、第27回を数えるCW CLUBの見学会で滋賀県の近江八幡市へ行ってきました。今回の住宅の設計は、藤木庸介氏(CW No.10 掲載)。お昼過ぎから雨が降り始めましたが、おかげでそれほど寒くなかったのは幸いでした。JR琵琶湖線の近江八幡駅から北西へ徒歩10分ほどの住宅地の一画、北側が前面道路の約53坪の敷地は、目下東側だけが空き地ですが、建物が建つのは確実でしょう。奥さんの知り合いであった建築家は、木材を使った家という要望を聞き、最初は木造で計画していたそうですが、予算的に難しいということになり、鉄骨造に切り替え、替わりに室内空間に自然の木材を多用することになったのです。隣家が接する両サイドの外壁にはガルバリウム鋼板が採用され、コストバランスが図られていますが、前面道路側にはガレージのドアを含めて、耐候性塗装が施された木製の格子が設けられており、木を使った家のイメージを伝えています。
1階は、建築主の要望によるビルトインガレージと寝室と水廻り、それに客間を兼ねたフリースペースです。床はすべて約30mmの厚さの無垢材の杉板が用いられていますが、この部屋だけはい草を使った素材が採用され、高さを押さえた天井共あいまって、落ち着いた雰囲気の空間となっています。
この住宅の最大のポイントである2階は、杉板の床、シナベニヤの天井と壁による約22畳のワンスペース空間で、時の経過とともに変化する家族の在り方に合わせて、ライフスタイルを自由に構成することが可能です。一部床が高くなっている部分は子供たちのスペースになる予定で、将来必要になれば、中央で間仕切って2部屋にすることもできるよう左右の壁には、子供たちのための収納も設けられています。
6m近い高さを持つ屋根型を現した天井は、中央に設けられたハイサイドライトから明るく柔らかな光が室内に降り注いでいます。ハイサイドライトの中央部には店舗用の電動式の排煙窓が設置されており、夏場は天井扇を逆転させて室内の熱気を室外へ抜くことが可能です。冬場は、薪ストーブによる暖められた空気を対流させ、部屋全体を暖める働きをしています。暖房は、薪ストーブ1台で行われていましたが、2月の滋賀県でありながら室内は柔らかな暖かさが満ちていました。熱効率の良い薪ストーブは、薪1本で約6時間も暖かさを保てるそうでランニングコストにも優れています。杉の無垢板による床の暖かな感触も気持ち良さのひとつといえそうです。
南側のベランダ側には食卓が置かれる予定でハッチ式の台所と繋がっています。調理はIHヒーター、給湯は電気温水器によるオール電化住宅です。
木材が多用された室内と高い天井がホッとさせてくれる2階のワンスペース空間は家族達が集まる場となるはずで、壁際には木製の長いデスクが設けられており、書斎から家事室、そして子供たちの勉強机として使われることになっています。従来のようなn個室+LDKというパターンにとらわれない新しい住宅のひとつのタイプとも考えられます。(伊東昭夫)◆