CwOnline読者レポート私たちの家が建つまで-第1章

カーサウエスト読者レポート私たちの家が建つまで
第1章 私たちの建築家探しが始まった

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 「いつかもし、自分の家を建てることがあるなら、その時は建築家の家を建てたい」とそんな風な“夢”を持つようになったのはいつの頃からだろう。  三十年近く前になるが、私が高校生の時、実家の建て替えをした。 近所の昔なじみの工務店に依頼し、両親にとっては文字通り一世一代の大仕事であった。それでもその結果、でき上がった建物は、何かが足りなく、どこかが間違っていた。素人ながらに夜眠る時間も忘れて何十枚も設計図を書き直した建築主である両親と経験だけが頼りの工務店の知恵ではやはり限界があったのだろう。

 その時、私はそう感じたのかも知れない。

 そして、'98年夏。たまたまいろいろな事情が重なり52坪の土地を購入することになった。いつかここに私たちの終の住処を建てられたらいいナというくらいの気持ちであったのが、いざ購入の手続きを終えてしまうと、“いつか”はできれば“早く”に変わり、私たちの建築家探しが始まった。

 最初、夫は消極的であった。

 「一介のサラリーマンである自分たちが建築家の家なんて――気分的にもまた実際面でも望みが高すぎるのではないか。それに一体どうやって大勢の建築家の中からたったひとりの“私たちの建築家を探し出すのか”」とっかかりさえまるでなかった。
written by 辰巳恵津子
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