2001年7月29日(日)午後1時半から京都市左京区修学院で第17回の建築家の住宅見学会を開催いたしました。建築家は藤村正継氏。今回は改装例で、ご両親の住宅である築約80年の町屋の2階に息子さん一家の住宅を設け、二世帯住宅に改装したものです。2階の棟を持ち上げ、生活空間に必要な天井高を確保しながら、梁や柱は昔からあるものが出来るだけ生かされています。この周辺の町屋は中京のいわゆるウナギの寝床的な町屋とはスタイルが異なり、十分な間口を持ち、虫籠窓が施されていたりするそうです。
玄関横の部屋を潰して設けられた吹抜けの階段を上ると、そこには外観からは想像も出来ないようなオープンな空間が広がっています。黒ずんだ古い梁や柱に漆喰が塗られた壁がなじんでいます。床は台所部分だけが杉の無垢材が張られており、それ以外は、コットンクラフト貼り仕上げです。
居間と台所、さらに通路も取り込んだ大きなワンルーム的な空間です。寝室と子供室も引き戸を開放しておくと、一つにつながります。寝室には昔ながらの虫籠窓も残されています。居間の前には新しく大きなテラスが設けられており、開放的な空間をさらにゆったりと感じさせてくれます。テラスもアウトドアリビングとして活用できるようにオーニングテントが備えられ、張り出すと長い軒替わりに強い日差しを遮ってくれます。テラスからは背後の山並みや1階の庭が見下ろせ、庭とは階段でつながれています。
テラスと居間の床には段差が設けられており、見学会の参加者も自然に腰を降ろしていましたが、友人達が大勢来たときにはベンチ替りに活躍することでしょう。
栗のダイニングカウンターを埋め込んだアイランド型のキッチンは、ステンレス製のオリジナル。最初はオールステンレスの方が古い梁や柱の木組を生かした空間にはかえってぴったりくると考えたそうですが、最終的には古い梁や柱との調和を考えて、ボックス部分は木製でつくられています。室内が暑くならず、掃除の簡単なIHヒーターを採用した電化キッチンになっています。
シンクに高さを合わせたダイニングカウンターは、適当な高さのイスが見当たらず、オリジナルデザインで目下製作中だそうです。台所に続く壁面のカウンターは書斎として活用される予定です。
浴室は階下の両親宅のを利用するということで、二階には洗面、トイレ、シャワールームが設けられています。子供室の前の太い古い梁にはお嬢さんのブランコが吊るされていました。
空調は寝室にだけ設置されることになっており、実際に暮らしてみて必要であれば追加するということで、当日も扇風機だけでしたが、漆喰の壁、大きな空間、風抜けの良さにより、当日も結構猛暑でしたが、この程度なら少し暑いかなという程度で十分過ごせると考えられます。町屋を現代生活に合わせて改修された一つの好例といえるでしょう。◆