8月4日(土)、滋賀県大津市仰木の里で第18回のCW CLUB建築家の住宅の見学会を行いました。建築家は本誌10号でご紹介した「記憶の庭」の設計者である株式会社クリエイティブネットワークの藤村正継氏で、先週の日曜日に引き続いての催しとなりました。
今回は先週の左京区松ヶ崎の町屋の改修とは異なり、長年勤められた会社を退職され、奥様と二人で老後を過ごすための棲み家です。比叡山と琵琶湖に挟まれた小高い丘に公団が開発分譲した団地の一画、定期借地権付きの敷地に建っています。
木造平屋建てで床面積約20坪の小さな住宅は、総工費1,100万円というローコストです。天井や壁は構造用合板そのままの仕上げ、サッシは既製品、キッチンもユニットバスも洗面台も最も安価なものが選ばれていますが、開口部はすべてペアガラス、壁の断熱材は100mm、高齢者への安全面からIHヒーターや電気温水器を採用したオール電化住宅を採用するなど必要なところにはきっちりコストがかけられています。
トイレや浴室も当然バリアフリーですが、車イスにも対応できる広さでつくられています。
4.5帖の寝室と客間用の4.5帖の和室の間に堀こたつが設けられた杉の無垢板を張ったリビングが配されています。菜園に面した縁側は、通常より1尺(約30cm)広くされており、この部分も生活空間に活用することが出来そうです。収納も玄関脇の納戸と広縁の上のロフトを利用した物置で十分といえそうです。建築主のお話では、タンスも納戸に置き、部屋には何もおかないつもりだそうです。
屋根は金属屋根の片流れで縦樋だけのシンプルな構造。外部のサイディングは、当初無塗装でと考えていたそうですが、悩んだ末、塗装を採用したそうです。
暑い日で、入居前でもありエアコンもまだ1台しか付いていなかったのですが、断熱材とペアガラスの効果でしょうか、十分過ごせました。まさにプロトタイプのような住宅でした。必要であれば4.5帖の個室2間を広くするだけであらゆる世代に対応するという気がしました。これで必要十分であり、あとは暮らし方に合わせて必要な空間や設備を足せばいいのだろうと思います。
これぐらいシンプルに暮らしたいなという気がした見学会でした。
参加者の皆さんも思いは同じようで、藤村さんの説明に納得感しきりでした。